君が嫌いな君が好き
悠斗が捺を病院に連れていくと、「風邪」と診断された。
全く酷い風邪だ…、と悠斗は帰り道で捺をおぶりながら思った。
「……」
代われるものなら自分が代わってやりたい。
捺を楽にさせてやりたい。
捺には笑っていてほしい。
なのに自分は捺を守れていない。
守れていない、守れない。
自分はなんて無力で情けないんだ。
悠斗は沈む夕日を見ながら自分を恨めしく思った。
『んぅ……』
「?……捺?目、覚めた…?」
『…ゅ、と…?』
寝ぼけている捺は、目を擦りながら聞き返した。
「うん、俺だよ」
『ゅ、…と……怪我、して…ない、?』
「!!
…大丈夫、どっこも痛くない」
寝ぼけている捺は、幼い子供のように途切れ途切れで話す。
『ゅぅ…と…、もう………わた、しの事、…で…………ぃで…』
「ん?」
悠斗は言葉を聞き取れなかったため聞き返すが、捺は再び目を閉じてしまった。
『ゅ、…と…』
捺は寝ている。
それでも、悠斗の名を呼ぶ。
「(可愛い寝言…)」
『も…、ぅ』
「?」
『も、う………わた、しのため…に………傷つか、な、…で……』
「!!」
捺の言葉に、悠斗は足を止める。
捺が起きているのかと確かめるが、捺は寝息を立てていた。
そして悠斗は、また歩き出す。
「俺は…」
夕日に照らされる道。
悠斗はポツリと呟いた。
「俺は捺のためなら……ついた傷でさえ嬉しいよ。
ずっとずっと…お前を守るのは俺なんだからな…」
(悠斗におぶられる捺の頬は一筋の光が出来ていた)