君が嫌いな君が好き
19:30
「なっちゃんなっちゃん、入っていー?」
夕飯の支度を終え、部屋に持ってきた悠斗はドアをノックして尋ねた。
「んり?寝た??」
『…寝てないよ』
「入っていい?」
『着替えてるから待って』
「うん分かった」
『…ちょっかい出さないんだ?』
「あれ?ちょっかい出して欲しかった?」
『…変態』
ドアの向こう側から聞こえる捺のけだるそうな声に、悠斗はクスッと笑った。
「お兄ちゃん、なっちゃんに嫌われたくないんだもーん☆」
『元から嫌い』
「ぐすん…」
冗談っていうのはわかるが、バッサリ言われるとそれはそれで傷つく。
悠斗は欠伸をしながらそう思った。
すると、ドアがガチャリと開いた。
『ん、…お待たせ』
「……捺」
ドアを開けた捺を見た途端、悠斗は目を見開いて固まった。
『…?』
「寝ぼけてる…?」
悠斗の問いに、捺は首を横に振り否定した。
「じゃあ、もしかして俺を誘っ」
『意味がわからない』
「いや、…その格好…」
―そう、悠斗が固まっている原因は捺にあるのだ。
薄いTシャツに太ももの途中までしか隠れないショートパンツ。
「冬だぞ?!風邪引いてんだぞ?!
そんな格好じゃ、風邪悪化するだろ?!」
『暑いもん』
「俺も色々ヤバいの!」
『そっちが本音でしょ』
捺はそう言うと、とりあえず部屋に入るよう悠斗に言った。
(保て!保つんだ!俺の理性よ!お前なら出来る!保てるはずだ俺ぇっ!)