君が嫌いな君が好き
「ほら、あったかいうどんだよv」
悠斗は小さめの鍋と茶碗、そして箸とレンゲを乗せたおぼんをカエルの顔が描いてある可愛い机に置いた。
「あ!
お水と薬持って来なくちゃ!
お兄ちゃん、うっかり」
『………』
「無言が1番心に刺さる!」
ぐすん、と泣きマネをする悠斗をよそに捺はうどんを茶碗に少し取り、食べはじめた。
『…』
熱いためか、捺はちょびちょびとうどんを啜る。
そんな捺を見ながら悠斗は目を細め嬉しそうに微笑んだ。
「卵は捺の好きな半熟にしてみたんだ。
…おいし?」
『………、ん…普通』
「そっか、ならいいんだ。
じゃ、薬取ってくるから食べてて」
優しく捺に微笑むと、悠斗は病院で処方された薬を取りに自分の部屋へと戻っていった。
『………』
黙々とうどんを食べ進める捺。
『………おいし…』
その頬は、微かに緩んでいた。
コンコン
「捺、薬ー」
『…うん』
捺の返事を聞くと、悠斗はドアを開けた。
「お、
食べ終わった?」
『…うん、見ての通り』
「じゃあ、お薬ターイムv
薬が飲めない場合はお兄ちゃんが口移『あー、薬大好きー』…ぐすん」
口移し、と言い終わる前に捺は悠斗の手からコップと薬を奪った。
何種類かある薬を一粒一粒口に含み、水で胃へと送りこんだ。
「…あぁ…口移しが…」
『いい加減諦めろ』
(口の中には、まだうどんの味が広がったままだった)