ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

「えっ♪じゃあ何っ?苺ちん、自分の彼氏に照れてたのぉ?」
「ちっ違うっ!彼氏じゃないっ!」

あたしは焦って、大きな声を出した。

いけないっ…と、思った。
今の言い方は、翔くんを傷つける。

だけど、

「そうですよ、まだ彼氏じゃないですよ♪間先輩」

翔くんは笑って言った。

“まだ”
あたしにはこの部分が、強調されて聞こえた。

「じゃあ、俺ら帰るんで♪行こう、苺先輩」
「えっ、あ…うん」

一瞬戸惑ったけど、このままメグちゃんと話してる方が、辛いと思ったから。
だから、一緒に帰る事にしたんだ。


「あのっ…翔くんっ」

学校を出て少し歩いた所で、あたしは勇気を出した。
ちゃんと言わなきゃいけないから…。

「ん?何?」
「さっき…“まだ彼氏じゃない”って言ったけど…あたしは…」

あたしは多分、翔くんの彼女には…。

「何も言わないで」
「え…」
「まだ早いよ。昨日俺、告白したばっかじゃん」
「でも…」
「苺先輩、明日の天気分かる?」
「えっ…と」

明日の天気?
今朝見た天気予報を思い出す。

確か…

「明日も晴れ…だったと思うよ」
「本当に?」
「うん」

あたしは頷く。

「じゃあ、絶対雨降らないって言える?」
「えっ、そんなの分かんないよっ」

天気予報なんて、外れることもある。…って、何で天気の話?

「ほら、分かんねぇじゃん♪
明日の事なんか、誰にも分かんないよ。天気もそうだし、津田先輩の気持ちも…」

え…?

「明日は苺先輩、俺のこと好きになってるかも知れない。明日がダメなら明後日、明後日がダメなら明々後日…ってね!」

ニッと笑う翔くんに、あたしは何も言えなかった。

確かに明日の事なんか、誰にも分からなくて…。

分からないから、今は無理しなくてもいいのかもしれない。

翔くんの言葉に甘えて…自分の気持ちを時間に委ねてしまっても、いいのかもしれない。

そしたら、いつの間にか翔くんを、好きになってる自分が居るかもしれない…。

明日の事…未来の事は誰にも分からないのだから。



次の日はやっぱり晴れたけど、天気予報とは裏腹に、

夕方少し雨が降った−…。
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