ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「麗奈もお帰り。もう帰ってたんだ?」
「うん」
俺は荷物を床に置き、そのまま床に座る。
「どうだった?」
「うん…お母さん元気そうだった」
麗奈は笑った。
そう、今日麗奈が学校を休んだのは、他でもない本当の母親に会うためだった。
麗奈のお母さんは今、遠い場所に住んでいて、仕事でたまたまこっちに来ているらしい。
今日は時間が空いて、会えるという話になったそうだ。
麗奈の服装が制服なのは、今の母親を心配させないため。
今日も学校へ行くふりをして、家を出た。
「昔と全然変わってないんだよ、あたしの事まだ子供扱いするのっ!」
そんな事を言いながらも、麗奈は笑顔で、とても嬉しそうだ。
まあ、久しぶりに会ったのだから、無理もない。
「でもね、お母さん少しやつれたような気がしたの…」
心配そうに目を細める。
「仕事大変なんじゃないか?」
「うん…」
「麗奈、おばさんと住んだら?」
元気のない麗奈に、俺は少し意地悪を言う。
「そっ!れは…」
戸惑う麗奈。
出来ないのは分かってる。
いいや、麗奈がしたくないだけ。
今の“家族”には、明人さんが居るから…。
例え想いは届かなくても、側に居たいのだろう。
今なら何となく麗奈の気持ちが、分かる気がした。
俺も“友達”でいいから津田の側にいたいと願うから−…。
でも、麗奈の口から出た言葉は、想像していたものと違った。
「そうだね…お母さんと暮らすこと、考えてみようかな…」
呟くように静かな声だったけど、確かに麗奈はそう言った。