ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*


それは本当に、文化祭に近付いてきた頃−…。

「津田さん?」

帰り支度を終えたあたしに、クラスメイトの女子が話しかけてきた。

「呼んでるよ?」
「え?」

翔くんかな…と思って、ドアの方を見ると、何だか見覚えのある、他のクラスの女子だった。

「あっ津田さんですか?」
「はい、そうです」
「生徒会の者なんですけど…」

あ、生徒会だったから見覚えがあったんだ…と、心の中で納得する。けど、続けられた言葉は、とても納得なんて出来るものではなかった。

「ミスコンの打ち合わせに来ました」
「………はい?」

ミスコン…?

「津田 苺さんですよね?」
「あっはい」
「エントリーされましたよね?」
「えっ?してませんっ!」

そんな覚えは全くない。

「え…でも…」

その子は手元の紙を見る。
あたしも横から紙を見た。

2ー5 津田 苺

確かにあたしの名前。

何でー…。

「ちょっと先輩に聞いて、確かめてみますねっ」
「すみません」

本当に心覚えはないけど、何だか申し訳なくて、あたしは頭を下げた。

どうして…あたしの名前が…?

生徒会の子は戻り、あたしは自分の机に向かいながら、考える。

あっ!!

一人の顔が浮かんで、あたしは走り出した。

教室を出て…
階段を上がって…


「…っ翔くんっ!!」

1年5組。翔くんの教室。

「苺先輩?」

翔くんはすぐに近付いて来た。

「苺先輩の方がこっち来るの、珍しいね♪どうかした?もう帰る?」
「あのっ…」

クラスの視線が痛い。

「ちょっとこっち」

あたしは翔くんを、廊下に連れ出す。

「翔くん…あたしをミスコンに応募したでしょっ!?」

翔くんだと思った。
この前話してたし…。

だけど、

「…してないよ?」

返ってきたのは、意外な返事だった。
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