ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「裕也、久しぶり!」
「久しぶりです」
明人さんと最後に会ったのは、引越しする前…3月の終わりくらい。
お盆に帰ってきていたらしいけど、俺は会う機会がなかった。
「麗奈…」
明人さんの麗奈を呼ぶ声のトーンは、俺を呼ぶ声のトーンと違って低い。
麗奈はぷいっと顔を逸らす。
いつもは大人っぽい麗奈も、明人さんの前では、子供っぽさが目立つ。
「何しに来たの?」
目を合わさずに、麗奈は言う。
「麗奈と話をしに」
明人さんは麗奈に近付く。
「本当なのか?」
「本当だよ」
「何でわざわざそんな…」
「お兄ちゃんは関係ない」
「関係ないことないだろ、家族なんだから」
当たり前だけど、言ってることがさっぱりわからない。
「あたしの進路だよ、お兄ちゃんには関係ないよ!」
進路…?
「裕ちゃん、行こう?」
「え…あ…」
麗奈に腕を掴まれる。
見えた麗奈の顔は、
真っ赤で、少し涙が浮かんでた。
「…明人さん、麗奈お願いします」
俺は麗奈の腕を掴み返して、明人さんの方に差し出した。
「ちょっ、裕ちゃんっ!?」
麗奈は、驚きと怒りが半分って顔をして、俺を見る。
「裕也ありがとう」
明人さんは麗奈の腕を掴んで、そう言った。
麗奈は大人しく、そのまま明人さんと歩いて行った。
口ではあんなこと言っていたけれど、顔を見た時に分かった。
本当は嬉しかったのだと…。
心配されて嬉しかったのだと…。
好きな人の前で、裏腹な態度を取ってしまう気持ち、分からなくはない。
だから、明人さんに任せた。
大丈夫、麗奈なら上手くやれるはず。
あの兄妹なら、仲直り出来るはず。