ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「気をつけてね?」
運転席から覗く、お母さんの顔。
「うん、ありがとう」
あたしは心配そうなお母さんに、精一杯笑顔を見せる。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
お母さんは、ふっと微笑んだ。
薬は飲んだけど…やっぱりすぐには効かず、
体は重くて…
頭はくらくらする…。
学校の階段って、こんなに長かったっけ…。
しんどい…。
頑張って階段を登ると、教室の前には、見慣れた男の子が立っていた。
背が、他の男子より少し小さい…翔くん。
「苺先輩っ!」
「おはよう」
「おはよ、今日居なかったから心配したっ!」
「ありがとう。…ごめんね、今日ちょっと、お母さんに送ってもらって」
「何かあった?」
「あ…荷物重たくて」
熱があることを、知られたくなかった。だから、あたしは笑う。
「そっかぁ…。じゃあ、気をつけて行ってきて♪」
「ありがとう。お土産買ってくるね」
教室に入った後、あたしはすぐに椅子に座って、机に顔を埋めた。
友達には「眠いの」なんて言ったけど、本当は辛くて。
風邪なのかな…。
早く…熱下がんないかな…。
この時、あたしは知らなかった。
この熱のせいで起こる、これからのこと…。