ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
☆裕也side☆


「裕ちゃん、おはよっ♪」

家のドアを開けると、いつものように麗奈が待っていた。

何も変わらない朝…。
だけど、今日はいつもより荷物が重い。だから、いつも乗る自転車には乗らず、歩きで学校へと向かう。

「裕ちゃん重くない?」
「ちょっと」
「持ってあげよっか?」
「ばか…そしたら麗奈が重くなるだろ」
「いいの、いいの。ちょっと持たせて♪」

笑いながら、麗奈が俺の荷物を取った。

「ん…」
「麗奈?」
「やっぱり重いっ!返す!」

再び戻ってきた荷物は重い。

麗奈はあの文化祭から、何かご機嫌で…。
詳しくは麗奈が喋らない限り、知ることはないけど、明人さんと仲直りできたのだと察した。

「いいなぁ沖縄♪」
「麗奈も去年行ったじゃん」
「でも、もう一回行きたいよ。海がすっごい綺麗なのっ♪」
「へぇ…」
「あれは恋人同士で行くべきっ♪」
「…」

嫌な…予感がした。

「裕ちゃん、いつか一緒に行こうね♪」

俺はただ、微笑んだ。
「うん」って返事しなかったのは、約束したくなかったからかもしれない。

だけど、今のでも麗奈にとっては、充分約束した事になるだろう。

苦しい“約束”は、月日を重ねるごとに積もる…。
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