ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

「え…」

振り向くと、隣に座っていたのは、川原くんだった。

川原くんと言えば、1年の時に由紀ちゃんと、いい感じになっていた男子。
結局、夏祭り事件でダメになった…はず。
そういえば、あたしまた同じクラスだったな…。

「えっと…何か用かな?」
「あー…あのさ…」

あたしの隣で、川原くんは言葉を詰まらせる。

川原くんが、あたしに用なんて…

「もしかして、由紀ちゃんの事?」
「…うん」

川原くんは、恥ずかしそうに頷いた。

「あのさ…津田さんって自由行動、由紀と一緒に回るんだよな…?」

由紀…?

あたしは、川原くんの由紀ちゃんの呼び方に、違和感を感じながらも頷くと、

「津田さん頼むっ!由紀と一緒に回らせてっ!」

川原くんは顔の前で、手を合わせた。

「え…と、あたしはいいけど…どうして?」

次の瞬間、あたしは自分の耳を疑った。

「や…やっぱり自由行動くらい、彼女と一緒に回りたいじゃん…」

え…?

「…彼女?」

首を傾げて苦笑いするあたしに、川原くんは追い撃ちをかける。

「津田さん…聞いてない?」

聞いてない…。
一度も由紀ちゃんに、そんな話をされた事はない…。

どうして−…?

「津田さん?」

深刻な顔をして、黙りこんでしまったあたしに、川原くんが話かける。

「あ…ごめんね…えと、そういう事なら由紀ちゃんと回ってください♪」

あたしは精一杯、笑顔をつくった。

「津田さん、ありがとう!」

川原くんは、とても幸せそうな笑顔を見せた。
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