ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

由紀ちゃんとあたしは、まるで初めて友達になった時の様に、微笑み合った。


ぎゅるるるるる…

突如聞こえた、雰囲気を読めてない音に、

「…ぷっ」

由紀ちゃんが吹き出す。

「笑わないで〜っ!」

何の音かって言えば…あたしのお腹の音。
そういえば、朝は食欲なくて、あまり食べれなかったし、倒れちゃったから、お昼も食べていない。
病院で点滴は打ってもらったけど、さすがにお腹は空く。

「お粥食べる?」
「うんっ」

由紀ちゃんは机からお粥を取ると、

「食べさせてあげよっか〜?」

いたずらに笑った。

「自分で食べれるよっ!」

あたしは、小さな土鍋の蓋を開ける。
ほんのりと伝わる温かさ。

「いただきます」

一口食べた。

この温もり…。

ふっと蘇る感触は、

夢の中のキス−…。


夢だよ…夢。
自分に言い聞かせながら、それでもあたしは、恐る恐る由紀ちゃんに尋ねた。

「ねぇ由紀ちゃん…由紀ちゃん来る前に、ここに誰か居た?」

一人の顔が浮かぶ。
そうであって欲しいと願うからかな…?

「あぁ…西藤くん居たけど?」

カシャン

あたしは手を滑らせて、レンゲを鍋の中に落とした。

「ごほごほっ!」
「ちょっ!苺、大丈夫っ!?」

大丈夫なんかじゃない…どうしよう…。

ドキン…ドキン…。

顔が…体が…熱くなる。

この熱は風邪のせいじゃない。

「由紀ちゃん…どうしよう…」

唇に手を当てる。

あのキスは………。


もう一度思い出す。

自然と涙が溢れた。

夢じゃなかったら…。
夢じゃない事を祈った。
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