ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

思い出すのは、この日この部屋でした、小さな俺と麗奈の約束−…。

“ずっと一緒にいる”

その約束を、今麗奈は、
「もういい」って言った。

“もういい”って−…。

「麗奈…」
「ごめんね。今までずっと、優しい裕ちゃんに頼ってた…」

それは、俺も同じ。
何だかんだ言って、麗奈に頼ってきた。

「でも、今日で終わりにするから…。一人じゃないって、今はわかるから大丈夫」
「うん…」

俺は返事をすることしか出来なくて、未だに気の利いた言葉すら、言えない。


「今度は…苺ちゃんの側に居てあげて」

「−…」

何を言われたのか、わからなかった。
いきなり津田の名前が出て、ただ動揺する。

「嘘…ついてたの。苺ちゃんが裕ちゃんのこと、好きじゃないって言ったあれ…嘘だよ」

なんで…。

最近は、目すら合わせなくなったから、本当に好きじゃないんだと思いかけていた。

「本当は苺ちゃんに、“裕ちゃんを取らないで”って、言うつもりだったの。でも、あの子…素直で優しくて…」

それ以上言わなくても、麗奈の言いたいことは、充分伝わった。

津田は、不思議な女の子。

小さな…小さな女の子なのに、今の時代、忘れがちな大切な物を、彼女は持ってる。

純粋で…優しくて…

人の心を丸くするような女の子。

人の心を、優しくさせてくれる女の子。


「苺ちゃんって良い子だね」

麗奈は優しく微笑んだ。

俺も返事をする代わりに、笑ってみせた。
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