ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「…わかってるよ」
麗奈は一人になった部屋で、ポツリと呟いた。
携帯の画面は、【お兄ちゃん】の電話帳。
前に進む為に、必要だということはわかる。だけど、たった一つのボタンを、押す勇気はまだなくて…。
携帯をそのまま、パタンと閉じた。
ふと…後ろの窓を覗くと雪…。
ちらちらと降る雪は…昔と同じ。
だけど、裕ちゃんはもういない。
カサッ
手に何か当たって、麗奈は手元を見る。
裕ちゃんがさっき、くれたもの…。
何だろうと、その無地の白い袋を開ける。
袋を逆さにして、手に落ちたのは…
合格祈願のお守り−…。
ポタッ
涙が流れた。
さっきまで平気だったのに、糸が切れたみたいに泣いた。
裕ちゃんのこと、好きだった−…。
なのに、側に居るのが当たり前で気付かなかったんだ…。
“れなちゃん”
どこからか声が聞こえて、顔をあげると、幼い裕ちゃんが居た。
かわいい笑顔…それは麗奈の心がつくった幻…。
でも、
“ずっといっしょだよ”
「ありがとう」
笑顔をくれた。