ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*


「…わかってるよ」

麗奈は一人になった部屋で、ポツリと呟いた。

携帯の画面は、【お兄ちゃん】の電話帳。

前に進む為に、必要だということはわかる。だけど、たった一つのボタンを、押す勇気はまだなくて…。

携帯をそのまま、パタンと閉じた。

ふと…後ろの窓を覗くと雪…。
ちらちらと降る雪は…昔と同じ。

だけど、裕ちゃんはもういない。


カサッ

手に何か当たって、麗奈は手元を見る。

裕ちゃんがさっき、くれたもの…。

何だろうと、その無地の白い袋を開ける。

袋を逆さにして、手に落ちたのは…


合格祈願のお守り−…。


ポタッ

涙が流れた。

さっきまで平気だったのに、糸が切れたみたいに泣いた。

裕ちゃんのこと、好きだった−…。

なのに、側に居るのが当たり前で気付かなかったんだ…。


“れなちゃん”

どこからか声が聞こえて、顔をあげると、幼い裕ちゃんが居た。

かわいい笑顔…それは麗奈の心がつくった幻…。

でも、

“ずっといっしょだよ”

「ありがとう」


笑顔をくれた。
< 205 / 494 >

この作品をシェア

pagetop