ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「…何してんだよ」
長い手をすっと伸ばして、西藤くんが上履きを取ってくれた。
上履きはそのまま、あたしの足元に置かれる。
「ありがとうっ」
「何自力で取ろうとしてんだよ。頼めばいーじゃん」
西藤くんはあたしの様子を、隣でずっと見てたみたい。
「うーん、もうちょっと手前に置いてくれてたら取れたのにっ」
「そういう問題か?」
「うん」
あたしは笑った。
なんか、こういう背に関することって、無駄に挑戦したくなる。
「で、何でこんな所にあるわけ?」
「…どうしてかな?」
そういえば、本当に何でこんな所にあるんだろうか…。
あたしが置くことは、絶対に有り得ないし…かと言って、他の人が置くことも−…
もしかして…。
一つの不安が胸を渦巻く。
あたしが西藤くんと付き合ってることを…良く思っていない人達…?
まだ付き合ってることは、みんな知らないはず…だけど、よく考えたらさっきから、ちらちらと見られてた気がする。
そっと周りを見る…
すぐにそらされたけど、知らない女の子達と目が合った。
「…」
やっぱり…そうなのかな。
「津田?」
西藤くんが、下駄箱から少し離れた所で呼ぶ。
「ごめんっ」
あたしは小走りで向かった。