ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「西藤くん、苺ちょっと借りるからっ!」
由紀ちゃんは返事も聞かず、あたしを引っ張って、すぐに教室を出た。
助かった…けど、
「西藤くん置いて来ちゃったよ…」
「大丈夫、大丈夫。王子なら上手くやるって」
由紀ちゃんの言葉通り、確かに西藤くんは上手くやりそう…って言うより、きっと騒ぎ立てるみんなを、無視するんだろうな。
「でも、怒ってないかなぁ〜?」
「大丈夫だって。王子が苺に怒るとこ、想像できないもん」
「うーん…って、由紀ちゃんどこ行くの?」
由紀ちゃんは、ピタッと立ち止まる。
「どこ行くってこともないんだけど…ただ苺と話したかっただけ」
「じゃあ、ここでいっか」と、あたしと由紀ちゃんは、廊下の壁にもたれた。
「学校来たら、話が苺と王子一色なんだもん、びっくりした」
「うん…あたしもびっくりした」
知ってるのは、由紀ちゃんと藤堂先輩だけ…だと思っていたから。
でも、どうせ分かってしまうことだから、早くにバレて良かったかもしれない。
「苺…何もされてない?」
「え?」
「…嫌がらせとか」
由紀ちゃんは小声で言った。
頭に浮かんだのは、今朝の上履き事件。
「多分…されてない」