ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*


「津田、帰る?」
「え?あ…」

放課後。西藤くんが一緒に帰ろうと、来てくれた。
思わず「うん」って、頷いてしまいそうになる。だけど、

「ごめん、今日は…先に帰って?」
「…待ってようか?」

言いながら西藤くんは、横目で廊下を見た。

それを追い掛けて目に入ったのは…こっちを見る沢山の人。

ほとんどが女の子で、“王子の新しい彼女”見たさに集まってることは、一目瞭然。
今日は色んな人に見られて、動物園の動物にでもなった気分。

「…大丈夫。先に帰ってて」

あたしは少し、苦笑しながら言った。

「わかった…じゃあ気をつけて」
「うん、バイバイ」

特に何も聞かないのは、優しさだろうか。
西藤くんはそれだけ言うと、一回あたしに微笑んで、教室から出て行った。

西藤くんの姿を見送って、あたしは帰りの支度を始める。

西藤くんが居なくなると、聞こえるんだよね…。

「えっ!?あの子っ!?めちゃフツーじゃんっ!」
「藤堂先輩のが、何十倍も綺麗じゃんっ!」
「ちっさっ!」
「王子ってロリコン〜?」
「なんかあの女だと思うと、ショックだしぃー!」

口々に向けられる、あたしの悪口。

内心は傷付きながらも、どうすることも出来なくて、あたしは無視して、鞄に教科書を詰め込む。

…と、ふっと手元が暗くなった。

顔を上げると、目の前には…メグちゃんが立っていた。
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