頑張り屋な彼女と紳士の皮を被った狼
「えっ! あの、お付き合いって。ほっ、本気ですか!?」


私は頭が真っ白になりながら一生懸命言葉を発した。

なにより青天の霹靂すぎて頭が回らない。

自分でも何を言ってるか分かっていなかった。


「本気ですよ。信じていただけないんですか?」

「いや、信じるとかの問題じゃなくて。ほら、私別に美人でもなんでもないですし、主任ととても釣り合わないです!」

「市川さんは十分美人ですよ。それに釣り合いなんて本人同士が好き合っていれば関係ないじゃないですか」


まさしく正論を吐かれる。

いや、確かにそうなんだけど、なんか突然すぎてわけわかんないんです!

すると、主任は私の頬を両手ではさんで、なおさら優しい落ち着いた声で言った。


「落ち着いてください。
 すみません、突然すぎて、驚かせてしまいましたね」


そうされると、主任の手が気持よくて少し落ち着いてくる。


「でも、僕が今言ったことは本気ですよ。市川さんは僕のことが嫌いですか?」

「――嫌いじゃないです。でも、主任って高嶺の花って感じで、今まで考えたこともなかったです」


そう、まさしく高嶺の花なのだ。

初めて会った時はドキっとしたし、彼の仕事ぶりはいつも尊敬しているが、

付き合うとか、自分から告白するとかなんて考えてもいなかった。

だって、噂で社内の美人たちがことごとく玉砕しているのを聞いていたから。

自分なんて、とても無理だって諦めていた。

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