cherry
「咲良のことが好きだ―。」

時間が止まったような気がした。

驚きを隠せなくて、言葉が出なかった。

咲良のことが好きだ。

その言葉が、頭の中で、何度も繰り返される。

あたしの心臓は、どんどん速く波打って、今にも外に飛び出してしまいそうな勢いだった。

緊張して、なかなか話せないでいると、拓也が不安そうな顔になった。

「咲良は、俺のことどう思ってる・・・?」

ッ・・・

“好き”

その一言だけなのに、その一言さえ言えれば済むのに・・・

簡単な2文字が、このときだけはすごく難しい言葉に感じた。

拓也の顔が、どんどん不安そうになっていくのが見ていられなくて、思い切っていった。


< 198 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop