cherry
観客席に近づいていくと、咲良の姿が見えた。

咲良の方に走っていこうとしたけど、目の前にある光景に驚いて、足がすくんだ。

俺の視界の先には、嬉しそうに話している、咲良と瞬の姿。

数分前までは、喜びを分かち合った仲間のはずなのに、俺は瞬への苛立ちを隠しきれなかった。

ずっと、ぼんやりと立っていると、瞬が咲良をどこかへ連れて行った。

いけないことだと分かっていても、俺は「付いていきたい」という衝動に駆られ、自然と足が2人の方に向かっていった。

付いて行った先は、人気が少ない会場裏。

俺は木に隠れて、ひっそりと聞いていた。

これから何が始まるのか・・・

―咲良と瞬。

―人気が少ない会場裏。

―緊迫した雰囲気。

俺にはだいたい予想が付いていた。



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