春うララ~時代劇編~
【ララー15】


この江戸の中には
なかなかの茶店が
あるらしい。





そんな噂を
聞きつけた与助は、
名物食いにやってきた。





「あの……団子一つ」





店の人にそう言うと、
申し訳なさそうな顔で
こう言われた。





「スミマセンお客様。

只今団子の原料を切らして
作れないんですよ…

材料は飛脚が届けて
くれるんですが…」





はるばる
四時間かけて
遠くからやってきた与助





彼の運の悪さは
とことん極めていた。




「じゃあ…帰ります…」




ハア…と帰る与助。




すると
一時間歩いたとこで
飛脚とすれ違った。




まさか…

今のは材料運びの…?




どうしよう…戻ったら
食えるか…


でも違ったら…




散々迷って
再び茶店に戻った与助。




「材料…来ました?」




「いえ…
まだ来ませんが…」




うう…


最悪だ…




結局さっきのは
飛脚違いだったようだ。




自分のついてなさを
噛みしめ、
再び家に帰る。




すると
1時間来たとこで
また飛脚に出会った。




ただ今回は
すれ違うと、
団子の材料が目に入る。




あ……


今度こそ間違いない!




ここまで来たら
行くしかない!

またも1時間かけて戻り
茶店に聞いてみた。




「材料来ました?」




「はい来ましたよ。
団子5文になります」




おお…

良かった…




早速買おうと
袖に手を入れると、
違和感を感じた。




…財布がない…




途中スられたのだ。




………




行き四時間+
途中帰り一時間+
店戻り一時間+
途中帰り一時間+
店戻り一時間+
家に帰り四時間…

合計12時間の
無駄な時間を過ごした
悲しみの与助であった
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