Maidoll Factory
「やめよう」

僕はメイドールの少女の寝顔を見つめながら言う。

知らなくてもいい事がある。

思い出さない方がいい記憶もある。

それは人間だけじゃない。

メイドールにだって、消されたままの方が幸せな記憶もあるのだ。

記憶を消去して不法投棄するなんて酷い主だと思ったけれど、これはもしかしたら、彼女の主の最後の優しさなのかもしれない。

勿論不法投棄は許せない事だし、そんな奴がメイドールを持つ資格なんてない。

だけど、せめて捨てられたという事実を認識して、彼女が深い傷を負う事のないように…。

記憶を消去したのは、そういう配慮だったのかもしれない。

ならば僕も、無理矢理にその記憶を呼び覚ますような真似はするべきではないと考えたのだ。

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