君色の夢に恋をした。



「……。」



顧問の言葉を無視して筆を動かしつづける私に、顧問は困ったように耳に髪をかけ直す。


動揺してる時の、顧問のクセ。


顧問は、あたしの返事がないことに気にしながらも、言葉を続けた。



「今日も…早口さん以外誰も来てない?」



そう言って顧問は、困ったように苦笑いする。


その呟きは、なんだか「あたしがしっかりしてないからかな…」って、自嘲気味に笑ってるようだった。



「……。」



……さっき顧問が言ったように、我ら美術部は、私以外はほとんど出席していない。



私の学校には「部活にみんな入ること」という校則があるから。

多分みんな、名目上の入部届けを、一番楽な美術部に出しただけなんだと思う。


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