二藍蝶
「・・・・・・」

「早く、入れ
 鍵、掛けろよ」

白いシャツを羽織る、親父の
背に、薄っすらと浮かびあがる
龍の刺青・・・

その後姿は
痺れるほどに、カッコいい。

ガキの頃から、ずっと
その背中を、俺は見つめ続け

追いかけている・・・

髪を掻き揚げた親父は
振り返り、俺を睨みつけて

低い声で言う。

「カイリ、俺の女
 泣かせんなよ」

「分かってる」

親父は、今度は口角を上げて
微笑んでみせた。

そして、俺の頬を抓った後
愛する女の眠る部屋に戻る。
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