アイコトバ。 feat.とうふ白玉
「それではそこの黄色のポロシャツの貴女からお願いします」
黒川は老夫婦の妻を指差した。老夫婦の妻は戸惑いながら名乗った。
「お、大久保尚美です…」
「オオクボナオミ様ですね。わかりました。貴方は?」
次に指差したのは老夫婦の夫。
「大久保敏樹です」
「オオクボトシキ様ですね。わかりました。貴女は?」
次に指差したのは全身紫を身につけた女。女は不機嫌な様子で名乗る。
「柳瀬洋子」
そう言い放ち、洋子はすぐに後ろを向いてしまった。黒川は女の様子など気にも止めずに、
「ヤナセヨウコ様ですね。わかりました。あ」
貴方は?と言おうとしたのを遮ったのは紫の女の夫だ。
「柳瀬隆一です」
しかし黒川は隆一の嫌味のこもった態度に対しても、
「ヤナセリュウイチ様ですね。わかりました。貴女は?」
と、機械のように続けた。そして指差したのは小さな女の子。女の子は笑顔で名乗る。
「大和百合です!!」
はきはきと元気な様子に隣に立っている父親も満足そうだ。
「ヤマトユリ様ですね。わかりました。貴方は?」