アイコトバ。 feat.とうふ白玉
順番通り次に指差したのは父親。父親は少し畏まりながら、
「大和秀樹です。よろしくお願いします」
と、軽く頭を下げる。しかし、黒川はまるで見えていないかのように機械的な笑顔で、
「ヤマトヒデキ様ですね。わかりました。貴女は?」
と、指差すだけだ。秀樹は少し表情を歪めたがすぐ戻った。そして指差された若い女は、気付いていないように笑顔で名乗る。
「高原瑞希です」
「タカハラミズキ様ですね。わかりました。貴方は?」
最後に指差されたのは若い男。若い男は自分が指差されるのを待ち望んでいたように、
「江川拓真でひゅ!!あっ」
と元気よく名乗った。が、すぐに顔が赤くなり下を向いた。隣で瑞希が声にならないくらい笑っていた。
そんか二人の様子も黒川には届かず、
「エガワタクマ様ですね。わかりました」
と機械的に言う。
「それでは皆さん、屋敷に案内いたします。着いてきて下さい」
屋敷に近づき黒川が大きな扉を開けた。不気味な音が辺りに響く。屋敷の中は薄暗かった。
「さぁ、お入り下さい」