揺らぐ幻影
常夜灯モードの部屋は、字面の割にオレンジ色に染めるので、
常夕灯の方がしっくりする気がする。
きつさがない柔らかな明かりは、優しいアロマの香りとよく馴染む。
土曜、チョコ
バレンタインは月曜日であるべきだと結衣は主張したい。
カップル立場だと十四日が土曜日なら、
お泊りをして金曜日の夜からラブラブカウントダウンが出来るのだろうが、
片思い組からすれば残念ポイントAレベルだ。マックスだ。
というのも、月曜日がバレンタインデーなら、土日にゆっくりと手作りチョコレートと向き合えるし、
学校があるのでごくごく自然に会って渡せるのに、
火・水・木・金が決戦日の場合、
学生は放課後からしかチョコに時間が割けないので、非常に困るって訳だ。
明日に備えてぐっすり眠りたいけれど、納得するまでチョコにこだわりたい。
ほら、乙女はなにかと大変な生き物なのだから、そこのところ評価していただきたい。
十四日、休日、呼び出し……
この三点が揃えば、好きな人にバレバレではないか。
愛美の提案を全否定し、結衣は「いっそ十六、月曜日かな」と、弱々しく主張した。
さすがに休日は……ね
カレンダーをずらせたらいいのにと思う。
バレンタイン前後賞、この場合 後日談過ぎるが、致し方ない。
けれど――
『だめ、十四日じゃなきゃ私も里緒菜も付き添わないから!!』
愛美のカツが鼓膜を吹き飛ばす。
彼女は何を言うのだろう、彼氏とデートをするのではないのだろうか。
いくらなんでも年に一回のカップルイベントの邪魔はできない。
付き合いが長いとは言え、バレンタインはやはりバレンタインだろう。
本当は心細い。
愛美が居るだけで不安が笑いになるのは確かだが、
恋愛より友情を優先してくれなんてワガママだろうし、
協力して貰ってばかりでは、愛想を尽かされるだろう。
おんぶにだっこにしがみつきじゃん、
だから結衣は断った。
チョコを渡す日、待ち合わせ場所についてきてくれると二人の友人と約束をしていたが、
それは十三日の予定だったからで、
恋人の為の十四日にお世話になるなんて気が引けた。