揺らぐ幻影
近藤は今、勘付いているのだろうか。
バレンタイン、呼び出し、休日――……
一般的な年頃の男の子なのだから、分かるはずだ。
結衣が自分に告白をすると分かっていて会うことをOKしたなら、
いくらか期待できるのではないかと手応えを感じる一方、
お情けで会ってくれるだけではないのかと不安で堪らない。
あるいは、告白されるなんて予測していないかもしれない。
そう、単純に会うつもりのだけなのかもしれない。
結衣は近藤ではないのだから、他人の思考は分からない。
だとすれば、ただ願うのは十四日を楽しみにしていてくれたなら、
星に願うのは、自分の利益ではなく誰かの幸せ、そんな人になれたら理想だ。
本当に嫌いなら、会わない
嫌なら予定あるって嘘付く、会わない
だから大丈夫。大丈夫、だよね……
無意味な確認作業は、もはや癖になりつつある。
夜空にふわふわ浮かぶのは雲だけではない。
恋の羽があるなら、余裕で空だって飛べる気がする。
バレンタイン……
『一応良かったね』
「ん、良かった」
断られたら九割失恋決定だったのに、彼が会ってくれる現実は嬉しい。
『結衣! うちら親友じゃん? 応援するからね!! あの人もきっと結衣のことを好きだよ』
「……白々しいよ」
『バレた?』
鳥肌な名台詞をくれた愛美に、結衣も負けていられないと演じた。
「私頑張るっ愛美が居てくれるから私頑張れるんだよっ!! 最高な親友だよ」
『うわ、嘘くさ』
「バレた?」
励ましよりも、爆笑しあう方が結衣は元気になれる。
口先だけで誰かを笑顔にできる愉快な人でありたい。
子機を姉に譲り、結衣は底を感じ取れないシーツに浮かんだ。
しとやかな柔らかさに、まつ毛が伏せるにはさほど時間を要さなかった。
キラキラ輝く星たちは、女の子たちに自力で頑張ってほしいから、
なかなかタイミング良く流れ星となり現れてくれないのだろう。
だから不意に夜空を駆けるのは、きっと頑張り屋さんの子へのご褒美だ。
今夜も日本のどこかで、健気なファンシー少女は星に願いを托している。
…‥