揺らぐ幻影

「昨日言ったじゃん」

愛美はわざとらしく瞳を細め悪戯に笑う。

「忘れんぼ」

里緒菜も厭味ったらしく、かつくったくなく笑う。


その笑顔に絶賛初恋中の現役女子高生はだんだんと昨日のことを思い出した。

――遡るまでもなく、それは放課後。
爆笑と制服がよく似合うバーガーショップでの出来事だ。


五百円くらいでお腹いっぱいになるので、とりあえずアルバイト代がピンチな時はよく利用する。

そんなお店の説明は置いといて――田上結衣。

昨日彼女は頼もしい友人について行こうと決めたのだ。

もちろん流されるのではなく自分の意志を確認し行動するのが土台だと、しっかり決意した。


  ……そうだよ、昨日

  そっか私……

結衣が何を誓ったのかというと、放課後三人での女子会議がきっかけだ。

男子禁制ガールズトークで語られるのは、カタカナのポップなかけらはなく、

一般的には人生観、友情論、金銭感覚、将来像、世間批判、過去話など、とにかく深く本音を飾らずさらけ出すのだそう。

そして女子高生となれば恋愛がテーマになりがちだ。


だが、結衣たちの恋愛ガールズトークはといえば、少し世間のそれとはズレているかもしれない。

彼女たちは『親友じゃん』、『当たり前に仲間だよ』みたいなガッツリ友情とは無縁で、

ウチラは〜級に語っちゃわない系だ。


つまり、素敵な小説やドラマや漫画にありそうな綺麗な会話の流れは微塵もない。


――そんなシビアな三人組の場合、真剣に応援するからこそ、心配だからこそ、ヨイショは抜きで きついことを言う。

片思いの協力に、お世辞やナアナア、アタシ論といった言葉だけの友情はいらないのだから、

客観的な目が重要なので、安易に甘いことは言わずにとことん本音で斬る。


以上の点を踏まえ、三人は放課後あくまでクラスの皆みたいな女の子特有のフォローは抜きで語り合ったのだった。

『ガンバレ』とか『大丈夫だよッ』みたいな助言なんてないのが結衣たちの日常だ。

普通に考えて友情論や恋愛論を熱弁されても反応に困る――そのような冷めた思考の集合体が結衣・愛美・里緒菜で、

それは標準的な女子高生をしているクラスメートの中では異質だった。

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