揺らぐ幻影
寒さからの鳥肌ではなくて緊張からだと理解していたため、意味がないと分かっていたけれど、
子供がおばけを怖がるようにお布団に包まった。
久々のメールを意識しても、どうせ結衣の独りよがりなのだろう。
裏声のハモリが快い着信音が知らせるのは、
《避けられてんのかと思ってた》という、理解不能な内容だった。
結衣の送信内容を無視で、この文章、
まだ嫉妬を知らない頃ならば、彼がこの一週間自分を気にしてくれていたのだと舞い上がったし、
ときめいたし、益々好きになったのだろう。
そして避けられたと思って凹んだということは、つまり自分は彼に女の子として認識されていると、
いちいち特別な意味を見出だせたのだろう。
それこそが片思い組の頑張れる源だった。
自分に都合が良い勘違いや拡大解釈をすることが、明日も張り切れる基盤だった。
しかし、もう子供ではない。
言葉には裏と表があって、含みがあることを知らなくてはならない。
自惚れたり所期したりするのは、お花畑の人の特権、
ここは現実、甘くない世界。
よって、『避けられてんのかと思った』に、結衣が望む意味は含まれておらず、
彼は正反対に、別の真意を込めているのだろう。
、嫌
結衣が避ける訳はない。
結衣は近藤が好きなのだ。
避けさせているのは近藤ではないか。
近藤が静香と居るせいじゃないか。
意地悪だ。近藤は凄く意地悪、遠回しに意地悪だ。だったらいっそ、はっきり振ってほしい。
メールを無視してほしい。
顔を見たら舌打ちしてほしい。
嫌いなら、思わせぶりなことをしないでほしい。
ちょっとは結衣の気持ちを考えてほしい。
違う、好きだと言ってほしい。
どうか隣を歩かせてほしい。
それなのに、意地悪だ。
秒針の音がしなくとも、一秒一秒正確に把握できる。
《なにそれ?》
神経が立ってしまい、気付いたら直球文章を送っていた。
後悔はない。
これ以上イジイジ悩むのは無駄で、何も生産性がない今、この際ハッキリさせたかった。
もう、この関係が、この立ち位置が嫌だった。
あの日にあげた恋心をさっさと返してほしい。