揺らぐ幻影
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藍色の空に美しい星たちがまんべんなく輝いている。

白い光の筋を辿ればそこには月があり、ウサギの世界が隠されている。


テストなんて適当で、やっつけ感覚で空白を埋めていく作業を繰り返した。

恋愛若葉マークの結衣は彼一色で、数学ⅠもAも、現国も英語もどんな問題を前にしても、

近藤のことばかりを思案していた。


静香を好きなのだろうか。
今は違えど、後々惚れる予定はあるのだろうか。

悲しくなる空想ばかりを繰り返し、一人で女子高生らしく絶望を味わった。


それでも翌日、なんとか気持ちを入れ替えメールをしてみよう。

《テスト順調? 直感を信じます笑。早く春休み希望》

《久しぶり。全然メールないから心配したから。風邪?》

読んだ瞬間、以前の結衣なら舞い上がっていたに違いない。

自分からのメールを待っていてくれたのかと淡く揺れた恋心を、今の彼女は叱りたい。


喜ぶポイントはゼロだ。
結衣とメールがしたいならば、いくらだって彼から送信する日にちがあったのだ。

約一週間、音沙汰なし。

それが意味するのは、メールがきたから返すだけで、わざわざ近藤自らは送らないと言うこと。

それは好意がない印だ。


どうやら近藤は、自分にとって結衣はわざわざ彼自らが連絡をとりたいと思う存在ではないという事実を、

無言で教えてくれたらしい。


  ……。

《テスト邪魔になるかなと。風の子だから心配無用。だって江頭家の夕飯見てる笑》

当たり障りない無意味な文章を打っていた。

もうすぐホワイトデーで告白の返事を貰えるのだから、

恋愛を絡めた内容にしたかったが、この調子だと振られる確率九割、

それなら、どうせなら、もう、いい、もういらない、


ちょうど今TVで流れているバラエティー番組のビビリ王様の話をしようと思った。


突然床下が爆発して、お笑い芸人さんがちゃぶ台を囲って夕飯をとっているという意味不明なゆるい内容、

趣味が似ている近藤なら同じ局を見ているだろう。


楽しい映像が時計の文字盤に反射して白く光る。

ふわふわしたお花はふんわりと甘く香るのに、その薫りに慣れた鼻はバレンタインを意識しなくなっていた。

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