一なる騎士
「やれやれ」

 肩をすくめ両手を広げるエイクに、クレイドルはさらに追い討ちをかける。

「貴方の結論を、リュイスの父上の結論とを一緒くたにして、彼を惑わさないで欲しいですね」

 しかし、精霊使いの長の苦言にもエイクは、いっこうにめげる様子もない。

「だがな、けっきょくはそういうことじゃないか。王と騎士との仕組みを壊し、世界を変えるには、『大地の剣』を壊すしか術はない。このままじゃ、この騎士様や僕の息子だってかわいそうじゃないか」

 いきなり持ち出された感情論に、クレイドルは笑みを深めた。

「ええ、そうですね。『大地の剣』を失った世界がどうなるのか見てみたいなんて、これぽっちも思っていないんですよね、あなたは」

 おだやかな声音の中にも挑発するように鋭い針が潜んでいたが、それでもエイクは彼と正対する気は全然ないようだった。
 
 飄々とした態度を崩さない。

「信用がないなあ」

 ひらひらと、リュイスに手を振ってみせる。

「リュイス殿、僕は先に帰るよ。どうもその精霊使いの坊やは苦手でね」

 木立につないだ馬に歩み寄ると、彼は不意に振り返った。

「だが、ほんとうに考えておくんだ。このままではいつまで経っても何も変わらないよ」

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