一なる騎士
「いったい、どこに……」

 気配を探して、クレイドルはとっさに感覚を切り替えた。
 精霊使い、いや『精霊の愛し子』ゆえの感覚。

 精霊の視力とも言われるもの。
 見えざるものを見る力。
 触れざるものに触れる力。

 それは『大地』を巡る<気>の流れをやすやすと捉える。
 王によって正しく導かれていれば、『大地』に豊穣をもたらすもの。
 精霊たちの命の源。

 いや、この『大地』自体を存在させているもの。

 人もまた『大地』の一部に過ぎない以上、独自の<気>を放っている。
 だから、見知った彼の気配なら簡単に探し出せる。

 そのはずだった。

 しかし。

「これは」

 目前にあったものに、圧倒される。
 知らず床に膝をついていた。



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