一なる騎士
 セイファータ城の正門から、続々と鎧兜に身を固めたきらびやかな騎士たちが整然と隊列を組んで出陣していく。朝日が彼らの鎧兜を光らせている。

 城の屋上からはその様子がよくわかった。
 軍勢の中には、レイルの父や先ほどの若い精霊使い、そしてレイルの祖父でもあるセイファータ公爵自身すら含まれているはずだが、レイルの目が探すのはただ一人だった。

 黒い髪と瞳の騎士。レイルの叔父と名乗った人。

 軍勢の先頭、黒地に黄金の剣がきらめく、ひときわ目立つ戦旗の側に彼を見つけた。
 まっすぐに背筋を伸ばして、ただ前だけを見て。

「リュイス叔父上」

 彼の名をつぶやいたレイルの栗色の瞳は、きらきらと輝いていた。
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