一なる騎士
 王都を取り巻く石壁の上から観戦しているのは、何も近衛騎士たちだけではない。
 王都の民たちもちらほらと入り混じっていた。

『大地の王』の膝元の民。
 王の乱心はもっとも彼らの知るところだったろう。

 白の騎士は、王の意を受けた騎士。
 黒の騎士は、女神の意を受けた『一なる騎士』。

 この勝敗が『大地』の命運を決める。

 しかし、そうとわかっていても、また彼らは、もっとも『王』の恩恵を受け、長きに渡って『王家』に親しみと誇りそして忠誠を持ってきた。

 心のうちは複雑だ。
 どちらを応援すべきか迷っているものも多い。

 黒と白の騎士たちは互いに位置を入れ替えつつ剣を交わしていく。
 剣音が響くたびに、見守る群集の中からもどよめきが上がる。

 嘆声とも歓声ともつかぬ声が入り混じる。

 しかし。

(劣勢か)

 剣に関しては門外漢の精霊使いの長にしても徐々にリュイスが押されているのがわかった。

 知らずクレイドルは両のこぶしを握り締めていた。

 アスタートが王の意を受けたものである以上、王命に逆らえない精霊は直接の攻撃を拒否するだろうが、やりようは他にいくらでもある。

 息子にそそのかされたセイファータ公爵の策に頼るのならいっそ自分が手を汚した方がいい。

 なにより自然な形で勝たせてやれるだろう。
 そう介入する決心をしたときだった。


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