一なる騎士
 視線が交差した。
 薄青の瞳と漆黒の瞳がにらみあう。

 知らずアスタートは息を飲んだ。

 黒曜石の瞳には何の感情もうかがえない。
 焦燥も闘争心も見えない。

 悩みを、怒りを、戸惑いを素直に見せていた青年はもうここにはいなかった。

 これは彼の知るリュイスではない。

 似て非なるもの。

(これが『一なる騎士』と言うことか)

 汗が吹き出るのを感じた。たいして打ち合ってもいないのに、息があがっている。甲冑に包まれた体が熱い。なのに背筋に冷たいものを感じていた。

(気圧されているだと! だが、)

 アスタートとても譲れぬものがある。相手が誰であろうと何であろうとたとえ戦女神その人であろうと負けるつもりはない。

 守らねばならぬものがあるのだ。



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