一なる騎士
 気づけば、まばゆい光も身体を引き千切れんばかりに吹き荒れていた風も去っていた。目を見開くとすぐ側に若々しい青年の顔があった。

 明るい青い瞳、赤茶の髪、どこか可愛らしげな。

「ク、クレイドル様?」

「まったく、二人してこんな無茶をするだなんてね」

 サーナはしばし唖然と精霊使いの若き長を見つめる。
 彼は今リュイスと同道して王都にいるはずだった。

(これが精霊による<移動>?)

 ぼんやりとあたりを見回せば天幕か何かの中のようだった。頭上の天井も視界を遮る壁も分厚いとはいえ布に過ぎない。外の光が透けて見え、姦しい喧騒が漏れ聞えた。

(ほんとうにもうここは『封の館』じゃないのね)

 そこで、サーナは腕の中にあったはずのアディリが消えていることに気づいた。あわてて尋ねる。

「アディリは?」


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