一なる騎士
 精霊都市ヴォルテはまた学園都市としての名を持っている。ヴァルテはこの世界『大地』の中でも最高学府と言ってもいいエルウェル学院を擁していた。

 アディリはその初等科に通っていた。『精霊の愛し子』であったから、授業料も免除され、生活費の心配もなかった。

 だが、そうでなくなった彼女には、エルウェルにとどまる術はない。アディリの家はご
く貧しい子沢山の農家にすぎない。とてもそれだけのお金は出せない。

 クレイドルは期待したのだ。

 この子の負けず嫌いな性格ならば、追い詰められればきっと答えを自力で見つけ出すだろうと。
 己の力が歪んでしまった理由に気づくだろうと。

 しかし、彼女の努力はクレイドルには全く予想外の方面に向けられた。
 猛勉強をはじめたのだ。寝食も忘れるほどに。

 そして、

(まさかエルウェルの本科に通るとはね、しかも首席とは)

 首席なら、授業料どころか生活費の支給まである。

 もうここを追い出される心配はしなくてよい。それどころか、無事に卒業できれば将来は約束されているようなものだ。女性とは言え、王宮に仕える高級文官にだってなれるだろう。

 精霊使いになれないじゃない、精霊使いにはならないのだ、そういつか彼女が言うのを聞いたことがある。その決断と行動は敬服に値する。値するが。

 クレイドルもまた『精霊の愛し子』だ。
 それゆえにわかることがある。

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