一なる騎士
(『愛し子』として生まれてきたものは、『精霊使い』以外のものになれはしない。きっと自分でもわかっているだろうけど)

 だからこそ、あんなにも必死で寝食も忘れるほど勉強したのだろう。
 すべてを忘れようと。
 精霊使いとしての自分をも忘れようと。

 でも、無理をしている。平気そうにふるまっていても、悲しみが透けて見える。
 いつも今にも泣き出しそうなのに、必至で我慢して。

 まだたった十二歳でしかないのに

 生まれたときから、息をするほどにもたやすく感じていたはずの精霊たちの存在。血を分かつ家族すらよりも比べようがないほどに身近にいたものたち。それをいきなり失ったのだ。

 そう、ほんとうは甘やかして慰めて教えてあげたい。

(大丈夫だよ、何も心配しなくていいよ)

 と。

 しかし、それは今更適わない。そんなことをしてもこの子の耳には空々しく聞えるだけだ。それどころか、今のこの子を支えていると思しき自尊心をも傷つけるだけだろう。

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