一なる騎士
 奥宮から外に出る扉が開かれた瞬間、リュイスは目を瞠った。
 雨が降っていた。
 それも生易しい降りかたではなかった。

 土砂降りの雨。

 さっきまで、雲一つない灼熱の青空だったはずなのに、もう日が暮れたかと思えるほどに、暗雲が垂れ込めていた。

 この変わりようは、いったい何なのか。

 視界に蒼白い光が走る。
 耳をつんざく雷鳴が、鳴り響く。

 彼の前途を思わせるかのように。

 時ならぬ嵐が去った後、『一なる騎士』の姿は宮廷から消えた。
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