一なる騎士

(5)レイル

 セイファータ城の庭は贅を凝らした造りだった。自然のままを生かした王城のものとはまったく性格が違う。緑豊かであっても、計算されつくされた人造的な庭だった。

 よく刈られ、乱れもない緑の下ばえ。微妙に色の違う緑の草木でつくられた茂み。華やかに咲く色とりどりの花。やはりきれいに刈り込まれた生け垣と灌木。そこここにおかれた大理石の彫像は、一目で名工の手によるとしれるもの。

 遠くに水音が聞こえていた。
 視線を遮る灌木のむこうには、噴水があるのだろう。

 よく手入れの行き届いた庭であるのに、どこか元気がない。王都と違って、セイファータは降水量に不足はなかったが、日光が足りなかったためだろう。どんな優れた庭師でも、不穏な天候の前には無力である。

 緑の庭を縫うようにしつらえられた白い小道。高価な玉砂利がしかれたそこは、足を進めるたびにじゃりじゃりと音がする。けれど、今のリュイスは芸術的な庭も足下の音も気がつかないほど考えにふけっていた。

(あれはいったい、どういう意味なんだ?)

 女神は数多の顔を持ち、その顔の数だけ名を持つ。
 すべてをそらんじることは、たとえ聖職者であってさえ難しい。豊穣の女神の名さえ、ひとつではない。その中から、どうして亡き母がセラスヴァティーの名を言いあてえたのか。

 そして、女神ナクーシャ。

 戦いの女神として、その名に加護を求める騎士は決して少なくはない。なのに、それが破滅を呼ぶとはどういうことなのだろうか?

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