そこを行く人【短編】
アオは、所々朽ちた校門の外に佇み、校内に入るでもなく、車に入っているでもなく、私を送り出した時とあまり変わらない様子で佇んでいた。
足元のには、行く時はなかった、崩れたコンクリートの小山があった。
アオは、無表情と言うには少し優しい顔で私を迎えた。
私も、何も考えないで、そのまま彼の胸に静かにすがった。
ふわふわとした意識を留めようとするように、彼の腕が私の身体を抱き締めると、私達はそのまま、胸の痛みを均等にならしていくように、じっとお互いを感じていた。
私が呼吸する彼の胸と、彼の呼吸する私の首筋はゆるりとそこだけが少し熱くて、少しだけ、ぼうっとした。
どのくらい、そうしていたのか。
鳩の鳴き声がすっかり止んだ頃、どちらからともなく身体を離すと、「行くか」とアオが微笑んで、手を差し出した。
私も微笑んだのだと思う。
手を引かれるままに車に乗り込むと、私達はその場を後にした。


