こころ、ふわり


美術室の外で菊ちゃんが待っていてくれた。


「頑張ったね〜」


菊ちゃんに頭を撫でられても、怒ってモヤモヤしていた気持ちはおさまりそうになかった。


それを悟られたくなくて、私はなるべく笑顔を作るのだった。









その日、部活の練習を終えて更衣室で携帯を見ると芦屋先生からメールが入っていた。


『部活終わったら電話ください』


という短いメール。


やっぱり他にも生徒がちらほら残っているのに普通にチョコなんて渡してしまったから、先生に注意されるんだ。


気が重くなる。


だって、あの時とった行動は衝動的だった。


里美が目の前で渡すのに、どうして彼女の私がコソコソしなければいけないのかって考えてしまって、他にも渡している子がいるんだし、私の存在も紛れるだろうと思ってしまった。


いくらなんでも、考えが甘かったかな。


更衣室のイスに座ったまま動かないでいると、素早く着替えた菊ちゃんが


「村田くんと待ち合わせしてるから先に帰るね!」


と私に声をかける。


「バイバイ」と言葉を交わし、手を振り合った。


少しそのままぼんやりしていたけれど、気を取り直して制服に着替えてカバンを持つと、更衣室をあとにした。










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