こころ、ふわり


少しの間、訪れる沈黙。


私から先生に会いに来たのに、なかなか言い出せなくて結局こうやって沈黙になってしまう。


言いたいことがまとまらなかった。


とりあえず、本題を切り出す前に確認しておきたいことがあった。


「先生。誰かに私のことを話したりしてますか?」


「え?誰かにって?」


芦屋先生が怪訝そうに眉を寄せる。
心当たりの無さそうな顔だった。


「玉木先生が……知ってるみたいに言ってたから」


「玉木先生?」


私が発した玉木先生という言葉に反応した芦屋先生は、「なんて言ってた?」と尋ねてきた。


「付き合ってたのかって、聞かれました。そうじゃないなら、どっちかの片想いなのかって」


言いながら、芦屋先生が寝言で私の名前を呼んだことも言おうか迷ったけれど、この場では言わないことにした。


寝言なんだから、芦屋先生が自分で分かるはずもない。


ただ、2人で泊まったりする関係なのかどうかは聞きたかったけれど、そこまでの勇気も無く。


芦屋先生はなんだか少し考えているような表情で、それきり黙ってしまった。


< 561 / 633 >

この作品をシェア

pagetop