こころ、ふわり


「私……急に聞かれたから、うまく言い訳出来なくて。余計に疑われちゃったかもしれないんです」


あの時、なんと答えればいいのか分からなかった。


でまかせだとしても、私の一方的な片想いだとでも伝えておくべきだったのかもしれない。


「それは言い訳出来なくても仕方ないよ。もし疑われても大丈夫。俺たちは、もう関係ないって言えるんだし」


芦屋先生が言ったその言葉は、私にとってはショックだった。


もう関係ない、というのは今の私にはつらい。


本当のことだけど、いざ先生の口から聞くと切なくなった。


「吉澤さん」


先生は私のことを「萩」とは呼ばず、苗字で呼んだ。


悲しみに暮れる頭をなんとか稼働させて返事をする。


「はい」


「誰かに詮索されたら、分からない時は答えなくていいよ。下手に嘘をついてもおかしいし。万が一の時は俺がちゃんと守るから」


「守るなんて」


先生に名前を呼んでもらえなかったショックから立ち直れなくて、私は先生の言葉尻を取り上げた。


「守るなんて言わないでください。そういうのだけでも、私はつらいです」


「……ごめん」


即座に謝る先生の表情は、とても申し訳なさそうだった。

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