Faylay~しあわせの魔法
「リディルさん!」

咄嗟に魔銃を構え、通常弾を連射モードで撃ち込む。しかしそれはアレクセイの眼前でピタリと止まり、バラバラと下に落ちていった。

「なっ!?」

ヴァンガードは目を見開いた。

剣を振るって叩き落すならともかく、何のアクションもなく弾をはじくだなどと信じられなかった。

今度は火の精霊ティナの力を込めた弾を装填し、撃つ。しかしそれも、ただ立っているだけのアレクセイを傷つけることはなかった。

彼の前にある見えない壁に、ティナの炎は阻まれて消えた。

「ヴァン、逃げて! あの人はアレクセイじゃない!」

「えっ……」

戸惑うヴァンガードに視線を向けるアレクセイの顔が、不気味に歪む。途端にヴァンガードの細い首が、見えない力にギリギリと締め上げられた。

「やめて!」

苦痛に歪むヴァンガードを見て、リディルはアレクセイの姿をした魔王に飛び掛った。

「お願い、やめて!」

どん、と固い胸に拳を叩き付けると、ヴァンガードの首から見えない力が解放された。彼の身体はズルズルと床に崩れ落ちていく。

「ヴァン!」

ヴァンガードに駆け寄ろうとしたリディルは手首を掴まれ、肩を跳ね上げながら振り返った。

「リディアーナ……掴まえた」

微笑みを浮かべる魔王に、リディルの心臓は冷たく揺れ動いた。

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