Faylay~しあわせの魔法
地面を転がって暴れるドラゴンは、ところかまわずマグマの息を吐き出し始めた。

このままでは岩盤が融かされ、この坑道は崩れて埋まってしまう。その前に逃げなければ。

ヴァンガードのところまで戻ろうとするが、ドラゴンの灼熱のブレスが邪魔をしてなかなか前に進めない。

「リディル、ごめん、もう一回アラン召べる?」

このままでは崩れてくる。そう思いインカムでリディルの語りかけると。

「うん」

インカムからと──すぐ傍から声がした。

驚いて振り返ると、リディルが息を切らしながら駆けてきたところだった。

「リディル!」

「……また怪我して」

フェイレイの腕を見たリディルは少しだけ顔を顰めると、森の精霊フォレイスを召んだ。

「ごめんフェイ、今は全部治してあげられない」

「俺は大丈夫。てか、何で来たんだ」

「来ないとみんな、やられてた」

「そ、そうだけど」

「早くヴァンのところに」

「……分かった」

今は論議している暇はない。フェイレイは飛んでくるマグマの息をかわしながらヴァンガードのいるところへと向かう。

リディルは目を閉じると、ゆっくりと深呼吸した。

「氷の名を謳う、我が名はリディル。名の契約に従い、血の盟約に応えよ、ロイエ・アラン」

彼女が呪文の詠唱をしているのを初めて聞いたフェイレイは、走りながら振り返る。
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