白衣を脱いでキス。
今、言ったことは先生に届いてないの?
送るなんて思わせぶりなことしないで。
「…大丈夫です、1人で帰れます」
暗くて、人気もなくてちょっと怖いけど、今、先生と一緒の空間にいるのは苦しいから。
診察のイスから降りてドアに向かおうとすると、腕を掴まれた。
正確には、ブレザー越しに。
「…あんな道、女の子が1人で歩いちゃダメだよ」
少し怒ったような目をする先生。
気遣いは嬉しいけど、これまでだって暗くなってから1人であの道を歩いたことはある。
だから今日だって大丈夫に決まってる。
そう自分に言い聞かせた。
「先生、あたし、単純で勘違いしちゃうから…」
あたしの腕を掴む先生の手に、手を重ねた。
「だから…優しくしないで…」
“歯医者”なんだから、“患者”に優しいのは当たり前だってわかってる。
でも、わかっていても、あたしは勘違いしちゃうから。