アンガー・グラッチ・ヘイトレッド
再び暗闇に戻る。
「うぅ…。」
これは詩織ちゃんの記憶?
それにしてもさっきから胸の中に渦巻いている悲しみ。心の弱い部分をえぐられたみたいな。
詩織ちゃんの体の力は抜けて、ぐったりと俺にもたれかかっている。目には涙の粒が。
「詩織ちゃん…。くっそぉ!もういいだろ!これ以上詩織ちゃんを苦しめるんじゃねぇ!!」
まっクロな空に向かって叫ぶ。
キラリと小さな光が俺の頭上から降り注ぐ。
「!?」
それと同時にパラパラと黒い砂が落ちてきた。
光が大きくなるほど落ちてくる砂の量も増える。まるでクロちゃんに穴が開いてそれがどんどん広がっていくようだ。
「ていうか、本当に崩れて来てるじゃんか!」
このまま突っ立っていると生き埋めになってしまうんじゃないか?というほどの砂が降ってきた。
俺は詩織ちゃんを起こそうと体を揺すったけど、起きそうに無い。
そうしてる内にも砂は勢いを増して降り積もっていく。
仕方なく詩織ちゃんをおんぶして黒い砂浜を歩いた。「どうなってんだよ!?」頭上にはいくつも穴が開きどこを歩いても砂が落ちてきて、遂には膝まで砂は積もった。
一歩踏み出す度にすっぽりと膝まで埋まって歩きにくい。
クロちゃんの口は見えてるのに、歩いても歩いてもなかなかたどり着けない。
「くっそ。」
でも歩くことは止めなかった。
何となくだけど分かる。
俺1人だったらとっくに脱出してるはずなんだ。
詩織ちゃんの心がクロちゃんに勝たなきゃ、ここからは出られない。
きっと詩織ちゃんは今もクロちゃんと必死に戦っている。
だから俺も諦めずに歩いている。
時間はいくらかかったっていいんだ。

そうだろ?

「正義は勝つ…だよね?詩織ちゃん。」
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