アンガー・グラッチ・ヘイトレッド

「大丈夫ですか！？」
そう言って駆け寄ってくる看護師。
そんなのはどうでもいい。俺は、
俺は倒さないといけないんだ。
「いいよっ。自分で立てるから。」
看護師を振り払い、ふらつきながら立ち上がる。
そして俺は屋上に向かった。
無性に叫びたくなったのだ。
エレベーターを使って屋上の風徐室まで行き、屋上へのガラス戸を乱暴に開けて外へ出た。
晴れている。
久々の太陽の光が目にしみて目を細めた。
風はそよ風。
そのまま歩いて向かい側の金網を両手で掴む。
「あ゛ーーー！！」
叫びながら思い切り金網を揺さぶった。
気が済むと金網を背にして足を伸ばして座った。
「何やってんだか…。」
自分に呆れた。空を見上げて
と、ガシャン！と目の前の扉が勢い良く開き、女子高生が飛び出してきた。
彼女は俺を見て険しい表情からほんの一瞬だけ驚きの表情を見せた。
俺も驚いた。自分の世界に浸ってたのがいきなり壊されて。何事かと思ったら同じ高校の女子が飛び出してくる。
手にはデッキブラシをにぎってるから、俺のお見舞いって感じじゃ無さそうだし。
屋上の掃除に来た？
新しいバイト？
てか今日は平日だし、まだ授業時間内のはず。とかなんとかそんなことよりも、
「可愛い…。」
いや、綺麗の方が合ってる。肩まで伸びた黒髪に緩くパーマをかけていて、白くて綺麗な顔は脆さや儚さを思わせる。
「完璧だ。」
と、口には出さなかったけどそう思った。さっきまでの気持ちが嘘のように心の中は清みわたっている。
「どうも。こんにちわ。」って声をかける前に彼女は突然弾かれたように屋上の奥に走っていった。
目で後を追う。
「アレは！」
彼女に隅に追い詰められるようにしてあの黒い玉が浮かんでいた。
黒い玉は彼女を威嚇するようにガバッと口を開いてギザギサの牙を見せている。
対する彼女はそんなことはお構い無しに、デッキブラシを侍の様に構えてジリジリと間合いをつめていく。
おいおいおい！危ないって！アレの危なさを知ってるのか？
「ちょっと！君！止めた方がいい！」