死霊むせび泣く声
 俺は車掌から起こされて、ハッと我に返り、


「すみませんでした」


 と一言謝って、改札口を抜け、駅を出る。


 今夜も、俺はコーポ瀬戸川の二〇三号室に帰り着き、靴を脱いでフゥーと一息つく。


 靴下を脱いでしまって、スーツから部屋着へと着替えた。


 洗濯機は夏場だと三日に一度は必ず回す。


 俺は疲れきっていて、冷蔵庫から缶ビールを取り出し、プルトップを捻り開けて呷る。


 仕事の後は美味しい夕食と、軽めのお酒がいいのだ。


 俺はビールを味わいながら、高まっていた気分を抑えようとする。


 夜は夜で寝苦しいのだから……。


 俺がビールを飲み終わり、一応空き缶を洗っておこうと思って、キッチンの水道の蛇口を捻ると、例の血の水が出てきた。


“またか”

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